富士の周りを旅した

富士山の周囲を回る旅をした。

新宿から中央線に乗り、立川で特急に乗り換えた。
ゴールデンウィークだったので駅には親子連れが多い。

立川、八王子あたりは住宅が密集しているが、 高尾駅を過ぎると急に建物が途切れる。
トンネルをいくつか抜けると周りは森になり、さらにしばらく行くと湖と町が現れる。
中央本線高尾駅相模湖駅の間は、東京の端を越えたという感じがして楽しい。

相模湖の先は山間を進む。
山に囲まれたような土地に、新しそうな戸建てが数件並んでいた。
山の中から急に開けた土地に出ると、ブドウ畑と民家が延々と続く。

甲府盆地の中ほどにある甲府駅で降りた。
駅の近くにある舞鶴城公園に行く。 舞鶴城の天守は、天守閣はなく土台が残っているだけだが、甲府盆地を一望できる。 周囲すべてを山に囲まれ、その山の麓まで家が建っている。
"ここから見える範囲が世界のすべてだ" という気分になった。
世界の外側に富士山の頂が見える。 青色や緑色をした山々の中で、雪をかぶって白い富士の頂はよく目立つ。

天守から見た甲府盆地

石垣を降りて街を歩く。 商店街があったが歩行者も少なく、店も閉まっているところが多い。 歩いたところはスナックやキャバレーが並んでいて、寂れた地方都市という感じがした。
住宅地も人は少なく静かだったが、騒がしい方に進んでみると祭りをやっていた。
正ノ木祭りという祭りで、縁日も多くなかなかの人手だった。 祭り用の駐車場には渋滞もできている。

南甲府駅まで歩き、そこから身延線に乗った。
身延線は全線開通90周年だそうだ。

電車は市街地の中を通り、小井川からは畑が広がる。 左手には御坂山地が見え、その上に富士山の頂上が見える。
電車は2両編成だったが、甲斐上野あたりで乗っていた車両から他に乗客がいなくなっていた。
そのまま乗り続けるつもりだったが、鰍沢口駅止まりだったため、そこで降りる。

鰍沢口の駅前はひなびている。
店は何軒かあったが、ほとんどが閉まっていた。 少し歩くと国道4号があり、ここは車が絶えず通っている。
国道を渡ると富士川がある。 下流の方には市街地があり、上流は山が迫っている。 駅名の通り、盆地の出入口のようだった。

鰍沢口駅を出ると電車は山の合間を走る。
天気の良い初夏なので、新緑と青空がきれいだった。
駅に近づくと木々が開け街が見える。 街は山の狭間に細長く伸びていたり、丸く広がっていたりする。

街をいくつか過ぎて下部温泉駅で降りる。
駅の周りは、店と宿が何軒かある他は、川と山が迫っている。
川沿いの道を上流へと進む。 大きな病院やホテルがあるが、廃墟らしき建物も多い。
人もほとんど見かけずひっそりとしているが、舗装された道が延びていて、 車もよく通るのでそのまま奥へ行く。

カーブを曲がると、川沿いに数階建ての建物が並んでいた。 下の方はうち捨てられた感じだが、奥に行くに従って小ぎれいになる。
「信玄公の隠れ湯」という看板があったが、確かに隠れていた。
温泉街の中心部と言うべきところには何軒か旅館が並んでいた。 中には廃旅館のような建物もあったが、 浴衣を来て歩く2人連れや、旅館の従業員らしき人たちともすれ違った。
山の奥の方には、民宿や民家、墓地や工事中の土地もある。 道はさらに山奥まで続いていたが、きりがないので適当なところで引き返した。

温泉街の周囲すべてが木に覆われた山々なので、旅館にせよ民家にせよ廃墟にせよ、 鮮やかな緑を背景にすることになってとても絵になる。

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下部温泉

下部温泉駅のそばには、甲斐黄金村湯之奥金山博物館という博物館がある。
時間の都合で中には入らなかったが、砂金取り体験を推していて、 これだけ自然に囲まれていても考えるのは金のことなのか、とは思った。

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湯之奥金山博物館

博物館の前にある足湯に少し浸かってから電車に乗った。
甲府行きは50分以上遅れていたが、乗るつもりの電車は数分遅れで来た。

山間を抜けて、身延駅で降りる。
聖地巡礼をした。

聖地であることを強く推してはいなかったが、 『ゆるキャン△』のポスターを貼っている店は駅前に何軒かあった。
栄昇堂という饅頭屋に斉藤さんの等身大パネルが飾ってあったので、 みのぶまんじゅうを買って写真を撮った。 同じことをしている人が他にも数人いた。

身延駅前には国道が延びていて、両脇にレトロな店が並んでいる。
道の西側は店のすぐ裏を富士川が流れる。 対岸にも住宅街が見えたが、川幅が広く橋が1本しか見当たらないので、 行き来はやや大変そうだ。
川の反対側はすぐそばまで山が迫っている。 山の方に行くと、舗装された道路が伸びていて、 所々に民家が建っていた。
高低差はあるが舗装されていて歩きやすく、 人や車がほとんど通らないので散歩に向いている。

身延駅に戻って電車に乗った頃には日が暮れていた。
外は暗くてほとんど見えないが、たまに街明かりらしきものが見える。
富士宮駅で降り、駅前のホテルに泊まった。

着いたときは夜中で分からなかったが、翌朝起きると大きく富士山が見えた。
富士宮には、駅前を除けば高い建物は少なく、戸建ての住宅地が広がっている。 ロードサイドに店が並んでいて、自動車も多く走っていた。
典型的な地方都市という感じではあるが、 北東に向けて少し高くなっていて、その先に富士山が見える。 それ以外の方角は遠くに低く山並みがあるくらいなので、北東側の異様さが面白い。
観光に来ているから面白いのであって、住んでいたらすぐに見慣れそうではあるが。

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富士宮源道寺

富士山を眺めながら源道寺駅に行き、身延線に乗る。
鰍沢口下部温泉源道寺も改札のない無人駅だが、源道寺駅ではICカードが使えた。 住宅街の只中にあるので、利用客はそれなりに多いのだろう。

終点の富士駅で降りる。
富士の玄関口といったキャッチコピーが掲げてあり、 きれいな富士山が見えはするのだが、富士宮を散策していたせいで目新しさは薄かった。
駅前に広い商店街があったが、半分以上はシャッターが降りている。 人もあまりいなくて、音割れした音楽がかかっているのが寂しさを増していた。
商店街のすぐ横には大きな工場がある。 工場自体もやや古びていて、日曜だったせいだろうが活気がなかった。

商店街と富士

富士駅に戻り、東海道線で沼津へ向かう。
富士の市街地を抜けると、窓の外には畑と民家が低く広がり、 その奥に愛宕山がうずくまり、さらに奥に富士山がそびえている。
面白い眺めなのだが、車内はそこそこ混んでいて、外の景色を眺めにくかった。

沼津駅御殿場線に乗り換えた。
御殿場線の車両は身延線の車両とよく似ている。 ドアに開閉ボタンがついていて、セミクロスシートで、 ドアのそばに整理券の受取口がある(御殿場線では閉じられていたが)。

沼津駅前は栄えているが、駅を出るとだんだんとひなびていく。
乗客は少なく、景色を見るにも良い。
裾野駅のあたりから見る富士山は均整が取れている。 山の形だけを言うならば、この旅の中で見た富士山の中でもっとも綺麗だった。

裾野駅の1つ上の岩波駅で降りた。
東西はどちらも山が近く、南北に開けていて南ほど高くなっている。 坂や丘は多いが、北の方には見晴らしが良いので、山の中という感じはあまりしない。
とはいえ、駅から東に少し歩くだけで山の中に入った。 西には国道があり、ここは自動車がずっと行き交っている。
当然ながら、岩波からもきれいな富士山が見えた。

富士山

御殿場線でさらに上に行く。
富士岡駅と南御殿場駅の間では、線路沿いに遮るものがなく、富士山の裾野から頂上までを一望できた。
御殿場のあたりは住宅が並んでいるが、そこを過ぎるとついに山の中に入っていく。

山間の足柄駅で降りた。
駅前には、ひっそりしたロータリーとハイキングコースを書いた看板がある。
山の際に民家が立ち並んでいて、少し奥に入ると山道になる。
少し高いところから見渡すと、眼下には民家があり、 正面にも山に沿って家が並び、そして奥に富士山がいる。
富士山に見守られた小さな街という趣で、非常に眺めが良い。

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足柄

歩き回っているとそれぞれ違った美しさが見られる。
段々に並ぶ家々と、山の木々と、近くの山の青さとが色々な割合で混ざり、 その上にはいつでも青白い富士がそびえている。
ただし山奥なせいか行き止まりの道が多く、行ったり来たりしているうちに電車を逃してしまった。

次の電車に乗って松田駅に向かう。
山の中を進み、山北に出ると大きく開ける。 左はすぐに山だが、右手には市街地が広がっていた。

松田駅で降りた。
小田急線に乗り換える人が10人以上いた。 駅前は意外に栄えておらず、飲食店が2,3軒あるだけで他は住宅だった。
町中にはそれなりに人がいて、川音川では子どもが数人遊んでいた。

新松田駅に行き、小田急線に乗る。
山の中と山に囲まれた街を何度か通り、気づくと都市に入っている。
連休終わりの夕方だったせいか車内はどんどん混雑していった。 外が暗くなってきたこともあって、残念ながら都会めいていく景色は見られなかった。

新百合ヶ丘駅で一度乗り換えて、新宿に着く。
新宿は人が多かった。